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仕事に『思いやり』は必要?気がきかない部下VS指示不足の上司論争について考えてみた(前編)

ご覧くださりありがとうございます。バックオフィス担当渡邉です!

 

皆さんの部下や後輩に、「やる気はあるのに気がきかないな……」と思う方はいますか?
徐々に出来るようになることを期待して都度指導しているけど、いつまで経っても言ったこと以外はできるようにならないな……
そんなお悩みは無いでしょうか。

 

それはそのはず、そもそも”日本人が、気をきかせた行動を取ること”は、かなりハードルが高い行為なのです。

 


”気がきく”という言葉は、主に以下2つの意味合いで使われます。
⑴臨機応変な考え方や行動が出来るさま
⑵人の性格がよいさま(思いやりがある、気遣いができる)

 

社内でのコミュニケーションにおいては、特に『思いやり』の要素を求めていることが多いのではないでしょうか。

 


そこで今回は、『思いやり』の意味を見つめ直し、なぜ気がきかないのか、どうすれば出来るようになるかについて考えてみたいと思います。
なお、深掘りしすぎて前後編になってしまいました(笑)。コラムの最後にリンクを貼っておりますので、ぜひ後編も合わせてご覧ください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●日本語の『思いやり』には、他国より複雑な要素が含まれている


この『思いやり』という言葉が具体的にどのような能力を指すのかについて考えてみたことはありますか?

 

実は、言葉の意味というのは文化の影響を受けるため、国によりニュアンスに違いがあります。

 

例えばアメリカでは、”相手の意志を尊重して行動する”のが、『思いやり』であるとされています。相手の要求無しに、自分の考えだけに基づいてとる行動は、おせっかいや、相手の意志を尊重していない行動ということになります。

 

ところが、タキエ・スギヤマ・リブラ氏(ハワイ大学 人類学部教授)によると、日本語の『思いやり』は”他者が感じている喜びや痛みといった感情を間接的に経験し、また他者を助けるために、言語的に明示されなくても他者の感じている気持ちを感じ、察する能力”という意味を持つのだそうです。
まとめると、”共感性や他者理解、察する力”といったところでしょうか。

 

ここまで複雑な意味を持つようになった原因は、昔の暮らしにあります。
日本人は、かつて農耕民族として集団で生活し、収穫した食料を皆で分け合って生き抜いてきました。そのため、「自分だけ良ければそれでいい」ではなく、「相手の幸せが自分のしあわせ」というように、相手を尊重して第一に考える文化が根付いたのです。そこに「衝突を避けたい」という気持ちも加わり、”共感性や他者理解、察する力”が培われていきました。

 


この、”日本人が考える思いやりのある行動”をとるには、以下の状況を踏まえた上で最良の結果を出す必要があります。

 

・相手の情報(立場・性格・習慣・しぐさ等)
・自分や周囲との人間関係
・TPO
・何が起きているか、何が原因か

 

またその上で、押し付けにならないように気を付けなければなりません。改めて定義化すると、なかなか高度な技術が必要なんですね。

 

参考:日米『思いやり』の違い|HUDDLE Web

参考:なぜ日本のホスピタリティは世界一と言われるのか?|コンサルティングオンライン

参考:気か利かない・気遣いできない人の特徴と出来る人なるための必須能力を解説|なぜなにどーして?

 

 

●日本人は「思いやり」に欠ける?


気をきかせた行動が難しい理由は、技術の習得が困難であることだけではありません。
そもそも日本には、他国と比べて人を思いやる文化が無いのです。

 

こちらの記事に、World Giving Index(世界人助け指数)※の結果が紹介されていました。
※イギリスのチャリティー機関による、世界の国々を対象とした、人々のGiving(他者に与えること、寛容度、人助け度)の状況を調査しランキングにしたもの。

 

「人助けランキング、日本は世界最下位」英機関 日本は冷たい国なのか ホームレス受け入れ拒否問題|Yahoo! JAPANニュース

 

この調査において、「見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という観点で見たとき、日本は世界最下位(125位)という結果になったそうです。

 


この原因は、一説によると、寄付や社会貢献の文化が薄いためと言われています。
同ランキング1位のミャンマーは90%が仏教を信仰しており、お布施の文化があります。そのため、他人に親切なおこないをすること、金銭や食べ物を分け与えることは、ミャンマーの方にとっては当たり前です。

 

日本にはそうした文化がありません。寄付や社会貢献の意義について教育を受ける機会も多くないので、なかなか他者に対する貢献意識が上がらないのです。
加えて、思いやりによって平和な関係を保とうとする習慣は、いつしか「平穏に過ごすために、厄介事に巻き込まれるのを避けよう。介入しないようにしよう」という保守的な姿勢を生み出しました。

 

結果として、困った人がいても「誰かがやるだろう」と考え、手を出さないというスタンスが、日本人の国民性として挙げられるほどにまで浸透したのです。

 

 

 

●『思いやり』と『おもてなし』の違い


さらに恐ろしい事に(?)、日本には『おもてなし』という文化もあります。

 

先ほど、日本は思いやりランキング最下位と聞いて、「日本人は優しい人が多いと言われているはずではなかったか?」と、意外に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこの優しさはホスピタリティ、つまり、思いやりではなく『おもてなし』を指します。

 

この2つは混同されがちですが、その意識が根付くことになった起源が異なります。

 

 

日本のおもてなしは、もともと人に幸福を与えるために訪れる神様(まれびと)をもてなすことを指していました。平安時代になると“まれびと”の意味が変わっていき、自分よりも身分の高い人物を指すように。その後、訪れる人すべてを対象とするようになりました。

 

よって『おもてなし』とは、神様ほど位の高い方への敬意を基にした”客人を気持ちよくもてなすことや、心の癒しを提供することを大切にする意識”であり、生活を共にする仲間と平和に過ごすために生まれた『思いやり』とは、目的や意味合いが全く違います。
今必要なのはどちらなのか?を明確に提示出来ると、コミュニケーションのすれ違いを防ぐことができそうですね。

 


ところで、社内では『思いやり』を、社外へは『おもてなし』を求められる日本のビジネスパーソン。
社会人として年数を重ね、ある程度型が出来てくると忘れがちなのですが、そもそもかなりハイレベルな能力を求め、求められてきたのですね……

 

 

さて、今回はここまでとさせていただきます!
後編では、「難しいならしょうがないか」「向き不向きがあるよね」と諦めてしまって良いのか?どうすれば出来るようになるのか?について書いております。

ぜひご覧ください!

 

 

▼後編はこちら

仕事に『思いやり』は必要?気がきかない部下VS指示不足の上司論争について考えてみた(後編)