情熱ブログ JYOUNETSU BLOG

情熱ブログ

そのお悩み、マスクとテレワークが原因かも?ニューノーマル時代の社員教育には土台作りが必要です!

ご無沙汰しておりました。バックオフィス担当の渡邉です!
今月からコラムを再開いたします。採用や教育、評価等、人に関わるお悩みの解決方法をメインに更新してまいりますので、ぜひご覧ください!

 

 

 

 

早速ですが、貴社では、コロナ禍の採用や教育についてどんな対策を取っていますか?
「実は、すぐ収束するだろうと考えていたため、その時々をやり過ごすだけでここまで来てしまった……」という方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。


しかし、ワクチンの接種は進んでいるものの、それが国民に行き渡り、集団免疫を獲得するまでには1年以上を要する見込みです。
三菱総合研究所が感染症や公衆衛生の専門家を対象におこなった、今後の見通しに関するアンケートによると、約半数が“本年末まで現状と同等の行動制限が必要となる”と考えているようです。また、2022年の末時点でも、“部分的な制限が残る”という意見が9割以上を占めています。2023年の末時点でようやく約4割強の専門家が“全面解除になる”と考えている状況です。

参照:新型コロナ(COVID-19)収束シナリオ|三菱総合研究所

 

今抱えていらっしゃるお悩みがたとえ「コロナが収束すれば解決するもの」だとしても、あと2年以上もの間抱えたままでいるわけにはいかないはずです。
中でも、『人に関する悩み』は様々な問題を引き起こすため、急速に解消する必要があると感じています。

 


そこで今回は、多くのビジネスパーソンが抱いている『人に関する悩み』について、中でもコロナ禍に入社した社員にフォーカスを当ててみました。

 

 

 

 

 

●コロナ禍の今、どの層も『人』に関する悩みを持っている


コロナ禍になってから、この特殊な状況について少しでも把握しようとしている方が増えたのか、ビジネスパーソンを対象としたアンケート調査を見る機会が増えたように思います。
いくつか見てみましたが、どの層を対象にした調査においても、皆一様に『人に関する悩み』を抱えていました。

 

例えば、ソニー生命保険株式会社が20卒入社の2年目社員に“入社後何に困ったか”を聞いたところ、最も多かった回答は「先輩・上司との接し方(34.0%)」だったそうです。

参照:社会人1年目と2年目の意識調査2021|ソニー生命保険株式会社

 

弊社でも毎年新入社員を対象に本音を引き出すアンケート調査をおこなってまいりましたが、やはり例年に比べて「人間関係に関する悩み」を抱えた人々が増えていました。

 


こうした傾向は、新入社員だけにとどまりません。
株式会社OKANが20~50代のビジネスパーソンに向けておこなった調査において、“失われることで離職を考える価値観”について聞いたところ、最も多かった回答は「良好な人間関係(31.9%)」でした。
続いて“なにがあれば離職を思いとどまったか”について聞いたところ、「上司に相談しやすい環境」「人事・総務に相談しやすい環境」を選択した人が、それぞれ約3割という結果でした。

参照:コロナ禍で約3人に1人が「離職が増えた」と実感。潜む約6割の“離職予備軍” は半年後に顕在化のリスク|@人事Online


このように全てのビジネスパーソンが人間関係に関するお悩みを抱えているという状況下ですが、まずはコロナ禍に入社した20卒、21卒社員のケアを優先する必要があると考えています。
なぜなら、教育をする上でも、最悪の結果となる離職を避ける上でも、まずは『信頼関係』を結ぶ必要がありますが、コロナ禍ではそれが特に難しいからです。

 

 

 

 

●コロナ禍に入社した20卒・21卒社員のケアを優先すべき理由


心理学用語に『ラポール』というものがあります。これはフランス語が語源の言葉で、“調和した関係”、“心が通い合う関係”という意味を持っています。心理学の世界では、カウンセリングで対話を重ねる中でクライエントとカウンセラーの間に生まれる、リラックスした関係や『深いレベルの信頼関係』を指しています。

無意識レベルのラポールが形成されなければ、クライエントはカウンセラーに心の中の悩みを吐き出すことはできません。ビジネスにおいては、相手に対する説得力や影響力が生まれず、アイデアや提案、想いが伝わりませんので、「部下や後輩が話を聞いてくれない」「分からないことや悩みがあっても先輩に相談できない」といったトラブルを招きます。

 

このラポールを形成するには3原則とされる以下の要素が必要です。


①相手を肯定・尊重する
②類似性・行動の同調
③ペーシングとリーディング

参照:ラポール形成とは?営業・看護・保育・福祉・恋愛でも使えるラポール形成の意味やメリット・テクニック|あしたの人事

 

ですが、これが“テレワーク”や“マスクをつけた状態”では、なかなか難しい条件なのです。

例えば、①を相手に示すには、『傾聴』の姿勢を見せる必要があります。自分が聞きたい話を引き出そうとするのではなく、相手が伝えたいと思っている声に耳を傾け、頷き相槌微笑むしぐさ等で共感を示すのです。

 

特に、顔・表情認知研究において、表情はコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすことが分かっています。表情や声のトーン、メッセージの内容を変え、聞き手が受ける好意度を調べた結果、メッセージの内容と声のトーンが与えた影響はそれぞれ7%と38%であったのに比べ、表情が与えた影響は55%と、大半を占めたそうです。(参照:顔表情認知|Wikipedia)

 

しかし、マスクをつけていると表情が伝わりづらくなるため、傾聴のレベルが下がってしまいます。

 

さらに、“どの感情を示す表情なのか”によって重要な顔の部位は異なるのですが、怒り・恐怖・悲しみの感情は顔の上半分から、喜び・嫌悪は下半分から伝わりやすいそうです。
つまり、マスクをしているときは、普段よりもプラスの感情が伝わりにくくなってしまうのです。

参照:表情認知における顔部位の相対的重要性|京都光華女子大学 伊藤美加教授(認知心理学、教育心理学)


2019年までに入社した人々は、初対面からマスク無し、かつ対面でのコミュニケーションを重ねてきているため、順調にいけばすでにラポールの形成が済んでいることと思います。しかし、20卒、21卒入社の社員はどうでしょうか。こうした状況を踏まえたコミュニケーションがとれていたでしょうか。

 

 

●コロナ禍での社員育成は「ラポール」「バリュー・カルチャー」がキーワードに


冒頭でお話した通り、まだまだ正念場が続くことが予想されます。マスクをつけて対面で話したり、オンラインのビデオツールを使ったコミュニケーションが主流となっているうちは、意識的にラポール形成をおこなった上で、環境の変化が激しい現代に合わせた社員教育をおこなう必要があります。
以下にポイントをまとめました。

 

 

①マスク着用時は声のトーンと身振り手振りに感情を載せる。

ラポール形成の3原則「①相手を肯定・尊重する」を満たすには傾聴の姿勢が必要で、マスクをしているとそれが難しくなるとお伝えしました。その分は、声のトーンやアイコンタクト、頷き、しぐさで意識的に補いましょう。
また、「③ペーシングとリーディング」のペーシングも意識しましょう。
ペーシングとは、話し方や呼吸のペース、視線、精神状態などを相手に合わせることです。これには、距離感を縮めたり、安心感や親しみやすさを与える効果があります。

 

 

②オンラインミーティングは表情に感情を載せ、共通点探しと同調で安心感を与える。

オンラインミーティングはマスク無しでできる分、表情が伝わりやすいというメリットがあります。しかし、対面の場合は会議終了後に雑談することができますが、オンラインの場合は業務外の会話をほぼ出来ないというデメリットもあります。
ラポール形成の3原則「②類似性・行動の同調」は、二人の姿勢が似ていたり、身振りなどの行動が一致することです。行動が同調すると、相手に安心感や好感を抱くようになりますので、画面越しでも意識的におこないましょう。また、人間にも“似た者同士で集まりたい”という本能があるため、共通点を見つけることで防衛本能が解除され、心の壁が薄まります。そうした共通点を見つけるには、雑談の時間も必要です。
“冒頭5分は雑談の時間にする”など、定例化させてしまうのが良いでしょう。

 

 

③入社後の教育はバリュー・カルチャーから行うこと。バリュー・カルチャーを軸に説明し、納得を促すこと。

ラポール形成はあくまで土台作りの段階です。お互いの気持ちが分かるようになるわけではありません。まっさらな状態の新入社員と、社会人として、会社の一員としての当たり前が身についている既存社員とで円滑なコミュニケーションをとるには、まず前提となる軸を共有する必要があります。

 

ブレない軸を持つことができれば、
・指示の真意をつかみやすくなり、コミュニケーションが円滑になる
・自分で考えて行動できるようになるまでのスピードが上がる
・“分からない”ことによる漠然とした不安が減る
といったメリットが得られます。

 

そして、その軸には、バリューやカルチャーを置くことをお勧めします。
リーダーとしてメンバーを率いる上で、一貫性を持つこと(朝令暮改を減らすこと)はかなり重要です。とはいっても、現在はVUCAと言われる、時代や環境の変化が激しい状況です。世の中が求めること(マーケットやクライアントのニーズ)が不確実でドンドン変化しており、組織の目標や商品・サービスもそれに合わせてコロコロと変化せざるを得ません。

 

それに比べ、バリュー・カルチャーは、時代や環境の変化が早く激しい中でもその影響を受けづらく、変わりにくい存在です。これを1番に考え、目標や商品・サービスを2番手以降に考えることで、組織開発や採用、育成等、人に関わる全てのアクションに一貫性を持たせることが出来ます。

 

 

 

 

●まとめ


いかがでしたでしょうか。今回は、コロナ禍の今、人事担当の方が抱えているであろうお悩みについて、要因と対応策をまとめました。

 

⑴意識的にラポール形成をおこなうこと。
⑵バリュー・カルチャーの教育から始め、業務中もそれらを軸に説明・指導すること。

この2ステップにより、人に関するお悩みやトラブルはかなり軽減されるはずです。

 

⑵の重要性については、@人事さんに掲載いただいている弊社取締役の矢間によるコラムでも詳しく解説しておりますので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。

 

▼関連コラム

コロナ禍における採用と教育も「バリュー」を軸にすべき理由|@人事プライムコラム

なぜカルチャー(企業文化)は企業価値を高めるのか?カルチャードリブンとは一体何なのか?|@人事プライムコラム